今あるものを直して使うこと

2021.11.22

家具を販売しているお店である頑固おやじが、「新しい家具を買わないでください」というのは少しだけ複雑な気持ちになるのですが、ここのところ頑固おやじがみなさんにおすすめしていることがございます。

「今あるものを直して使うこと」です。

お部屋の中を見渡すと、実にいろいろな家具が並んでいます。

お引越や新築して間もない方は、買ったばかりのピカピカの家具に囲まれて、実に充実した毎日をお過ごしのことと思います。でもそんなピカピカの家具も長年使いつけることで、色々なところに不具合が生じてしまい、そろそろ買い替えるべきではないか・・と新しい家具を探し始めた方もいらっしゃることと思います。

例えば塗装が剥げてきてちょっとみすぼらしくなってきたテーブル。

例えば革やボロボロになってしまったり、カタチが変形してしまったクッションがのっかったソファー。

例えば座る度にギシギシと揺れる椅子・・・。

例えばある日解体した倉庫やお家の中からでてきた古いタンス・・・。

頑固おやじにもいわゆる「買い替え」のお客様が新たな生活のパートナーとなる家具を探しにいらっしゃいます。新しいものを探す、見つけるという行為はとてもわくわくするものです。でも同時に今まで一緒に暮らしてきた愛着のある家具とお別れする寂しさも同時に経験することになります。

リサイクルショップに引き取ってもらう方や、お友達や家族にプレゼントして使ってもらう方ももちろんいらっしゃいますが、処分する・・ということがほとんどだと思います。

でも最近、ちょっと様子が変わってきました。

「物を捨てずに大切に使う」ことが社会にじわじわ浸透するようになってきて、「愛着のあるものを、できれば直して使いたい」と思う方が少しずつ増えてきたような気がします。

家具の修理やリメイクは、実は思った以上にお金がかかります。

その理由は、買った当時と物価が著しく変わって、全体的に家具の値段が上昇傾向にあることや、直すことが新しくつくること以上に手間がかかってしまうことがあること、昔のものを直すことのできる職人が減ってしまっていること等です。「これからも安心して使い続けていただく」ように直すことは、思ったより簡単ではなく、難しいこともたくさんあり、思った以上にお金がかかる・・ということも多々あります。ですから今までは、買った方が安い、早いという判断をする人が多かったこともごくごく普通のことだと思います。

ですが、やはり時代の流れでしょうか。

ここ最近は、「お金をかけても直したい、責任もって使い続けたい」という方が、増えてきたような気がします。

つい先日も、数十年前に買った思い出の革張りのソファーを、すっかりきれいに張り替えた方がいらっしゃいました。

実はソファーの張り替えは、思った以上にお金がかかります。張替したソファーは総革張りのふかふかのクッションの大きなソファーで、張り替えるのに、とてもお金がかかりました。新しく買い替えた方が安いかもしれない・・・そう思ったので、張替の見積もりをご案内する際に、新しいソファーの資料も一緒にお渡ししてご検討いただきました。

でもお客様は「３０年前にとても気に入って買いました。とても座り心地もよく、今まで本当に気に入って使っていたので、これからも使い続けたい」とおっしゃってくださって、ちょっと高い金額だったのですが、張り替えていただくことになったのです。

すべての家具が直して使うことができるとは限らず、やむなくご修理をお断りすることもございます。

例えば修復不可能なつくりや素材のもの、また大変申し上げにくいのですが、新しく買い替えた方がよさそうなもの等もございます。

買った当時のお値段、修理に必要なお値段、同じようなものが今いくらくらいで販売されているのか、買い換えるとなるといくら位かかるのか、手放してしまって本当にいいのか・・・など、いろいろなことを考慮して、お金をかけて直して使うかどうかの結論を導き出さなければいけません。

選んだものを使う責任を全うするということは、なかなか難しいことだな…と思います。

さて、もしこの記事を読んでくださった皆さんの中で、「直して使うか、新しく買い替えるか」お悩みの方がいらっしゃるのなら、一度頑固おやじまでご相談ください。

頑固おやじのお店で新しく買って頂きたいのはやまやまですが、まだまだ使い続ける価値あるものをみすみす手放してしまうことも、もったいないと思うのです。

【依頼の多い修復内容】

■桐ダンスの削り直し等

■ソファーの張り替え、クッションの新規作成

■椅子の張り替え、がたつきの修理

■ウレタン仕上げのテーブルの再塗装、オイル仕上げのテーブルの削り直し